「アオ!」



振り向くと、幼馴染の真島歩夢(まじま・あゆ)が来た。

歩夢はいじめられ学校に行けなくなった私と友達でいてくれる、大切な友人だ。

大切な友人と言うか、親友かな?



私は鞄の中から、両手に収まるサイズのホワイトボードを取り出した。

端っこにある黒いレバーを上下に動かせば、ペンで書いた文字が消える優れもの。

声が出せない私にとって、とても大事なものだ。




〈アユ、おはよう〉

「相変わらずアオは早いね」

〈そうかな?〉

「そうだよ。行こう!」



家が近所の私たちは、今日も一緒に学校へ通う。

最初は慣れなかった筆談にも、アユは慣れてくれた。



「そういえばアオ。
今日あたし、帰り一緒に帰れないんだ」

〈そうなの?〉

「本当は一緒に帰りたいんだけど、今日の放課後、委員の集まりがあって」



しっかり者のアユは、私のクラスの学級委員を務めている。

放課後や行事前の集まりは大変そうだ。



〈わかった。
じゃあ今日は1人で帰るね〉

「本当ごめんね。
今日の帰り、気を付けて」

〈勿論〉





その後話し好きなアユの話を頷きながら聞いているうちに、学校へ着いた。