すると彼はホワイトボードを指さした。




「これ何ですか?」



私は再び書き込んでいく。



〈私、声が出ないので。
これで会話しています〉

「なるほど…そういうことですか」



彼はコクコク頷く。

その後、私を見た。




「あなたに言いたいことがあるんですけど、良いですか?」



言いたいこと?

何だろう?



私が頷くと、彼は極上の笑顔を浮かべた。

ドキッと心臓が高鳴る。

何…何言われるんだろう?







「こんな所で落ちそうにならないでくださいよ。
たまたま僕が通ったから良いものの、誰も通らなかったらあなた死んでいましたよ?
まぁあなたのこと僕は知りませんから、あなたが死のうが生きようがどうでも良いですが。
馬鹿は馬鹿らしく、早く家に帰ってください」





笑顔を浮かべたまま、彼は踵を返した…。

放心状態の私を放置したまま…。