「おはよう。」

「おはようございます。」

真司さんの寝起きでかすれた声が

なぜか私にはセクシーに聞こえた。

滝野さんはすでに出勤した後だった。

「ゆずるは毎朝出勤前にカフェに入り浸っているんだろ。」

「そうだったんですか。」

私は納得した。

「ひいきのカフェマイスターでもいるのかも。」

「滝野さんに限ってそんなことはないと思いますけど。」

「君はゆずるを過大評価してるよ。」

「そうでしょうか。」

「アイツほど寂しがり屋でコンプレックスの塊はいないと思うね。」

「そんな風には見えませんけど。」

私は真司さんとこんな風に会話できる朝が毎日続くことに

抵抗感がないのが不思議に思えた。

彼が滝野さんの身内だからだろうか。

私は温かいミルクティーを入れたマグから立ち上る湯気に

ふぅっと息を吹きかけた。

真司さんはコーヒーをドリップしていた。

「君は離婚したばかりで慎重なはずだ。」

「はい。慎重です。」

「俺は君と付き合いたいと思っているがストレートすぎて面食らうだろ?」

私は彼をまじまじと見た。

「今は何も応えられなくてごめんなさい。」

私は素直に謝った。

「いいんだ。無理を承知で言った俺が悪いんだから深刻に取らないでほしい。」

彼は自分の言動が人にどう影響するのかを

ちゃんとわかっている人だと思った。