まとまっていない、私は何を伝えたいのか、私の気持ちはちゃんと伝わっている?リアクションがないと不安になる。

「だから、折角武藤さんがやっと私と出会ってくれたのに、些細なことで離れていって会えなくなるのはもう嫌なんです。私はこれからもっと武藤さんとコミュニケーションをとって、理解して、武藤さんを支えたい。
…私、ちゃんと腹くくったんです。もう、ぶれません。」

まとまらない気持ちから大切な言葉を紡いだ。言葉を待つ。

武藤さんはしばし黙ったままだったが、福富町で2人で過ごした時のようにまた口の端を上げてニヤッとした。

「…お前さ、1ヶ月ちょっとで大袈裟すぎるんだよ。」

少し冷めたコーヒーを啜ると、丁寧にそれを置いた。私もコーヒーに角砂糖を一個だけ入れて飲もうとする。角からほろほろと溶けていく。一口飲むと、甘くまだ温かい味にほっとする。

そして、あんただったのがお前になったことに少しドキッとする。

「極道ってのはちょいちょい稼業を変えるんだよ。あんたみたいに何かを思うままに極める仕事とは違うぜ?」

問いかけの真意を図りかねたが思ったことを続ける。

「変えるんだから興味深いんです。私が選ばなかった道を知れるんだから、武藤さんについていきますよ。」

その私の言葉をきいて、武藤さんは、タバコに火をつけながら穏やかに笑って言った。

「で、よ…」



紺色の相棒は幸せを運んできてくれる。
今頃、駅前のコインパーキングで私の愛車は微笑んでいるにちがいない。