閉めきっていた車内は、夏のなごりを残していた。

すぐに窓を全開にする。

私のオンボロ車は、ゆっくりと外の風を招き入れ、ついでにカゲロウも迷い込ませた。


キーを捻る。
エグゾーストノートが、夜に響く。

年期の入った黒のミニ・クーパー。

足回りは、カーセックス目当ての男から修理してもらった。

インチアップしたいと言ったら、どっかの役所のお偉いさんがホイールまでセットして、私にくれた。
もちろんその後、私は抱かれた。

ステレオも、いいのがついた。



でも、このクーパーだけは乗り換えることなく、ずっと同じだった。

こいつは常に私と一緒だ。