少しずつ、見えるミライ

二人でケーキの入ったトレーを運びながら売り場に戻ると、案の定、沙苗ちゃんがイヤらしいほどニヤニヤしている。

その笑顔は、まさしく悪代官モードに入った証拠。

触らぬ神に祟りなし。

ここは何とか平常心で切り抜けよう!!



「戻りました。ありがとうね。」

「未帆ちゃん、こっち向いて。」

「何?」

「グロス、取れちゃってるよ。」



耳元でこそっと囁く沙苗ちゃんの目は、キラキラ輝いている。

へっ? 嘘!?

ハっとして、思わず口を隠すと同時に、ケーキをショーケースに移している彼の唇を確認してしまう。



「やだ、もう。未帆ちゃんたら、わかりやすい。」

「え?」

「そんな薄い色のグロスじゃ、ちょっとぐらい朝陽君に付いててもわかんないから大丈夫。」

「.......。」

「いいなぁ。もう羨ましすぎる。私も本気でペット探そうかなぁ。」

「な、何言ってんの、もう!!」



うそ~、バレてる!!

超恥ずかし~!!

身体がカアっと熱くなり、どんどん顔が赤らんで行くのが、自分でも手に取るようにわかる。



「すいませ~ん。」

「はい、いらっしゃいませ。」



悪代官がお客様に声をかけられたタイミングを見計らい、下に隠れて、ポケットに入っていたリップクリームを塗り、とりあえず応急処置をする。

落ち着け、落ち着け.......

今は、仕事中なんだから!!