「ねね、今日のニュース見た!?」
「あ、見た見た!あのアイドル、脱退するんでしょ!?」

がやがやと騒がしいここは、教室。
私は自分の席に座り、あのノートを見ていた。

カタン…

隣の席のイスを引く音が聞こえて、ふと見ると、

「…おはよ、陽月。」

ふわりと優しく笑ったその人は、とてもかっこいい人で。
暗めの茶髪に、180以上はあるであろう身長、綺麗な顔。

この人は確か…


『佐野蕾君』


「陽月?」

返事をしない私を不思議に思ったのか、
顔を近づけてくる佐野君。

私は顔をゆるりと逸らした。

「…陽月?」

私はそれを無視して、机から本を出して読み出した。

その行動に唖然としているのか、動かない佐野君。



『佐野蕾君は友達です。』

そう、ノートに書いてあった。
だけど。
私は、佐野君と仲良くするつもりはない。



だって。
傷つくでしょ?




友達が、
自分のことを覚えてないなんて。




ノートの私は、友達が欲しかったのかもしれない。
もちろん、私も友達は欲しい。
だけど、
傷つけるのをわかってるなら、
私は独りを選ぶ。

ごめんね、
ノートの私。

ごめんね、
佐野君。