<5日目>
「ホセ、話があるんだ…」
「ロラン…?」
言いにくそうに顔を伏せながら、俺の顔色をうかがうロラン。
俺は相変わらずベットに拘束されたまま。
昨日ダメもとで頼んだらさらに鎖を4,5本増やされた。
用心したいのは分かるが、俺だって働かなければならないのに…
「…クラウン、今年十八になるだろ?」
「あぁ」
「…それで、クラウンの誕生日に…」
「…!?」
いやだ、聞きたくない…
「…婚約の、正式な発表をするらしい…」
「…そんなに、早くか…?」
「あぁ…」
クラウン…
どうして…?
こんなに思ってるのに…
せめて、あと一年くらい夢を見たかったのに…
「くら、うん…」
「ホセ…早まるなよ…?」
「分かってる。クラウンには、ウィングには絶対に親しい人を失わせはしない。」
「…?」
死ぬときは、独りだと決めてる。
クラウンには、絶対に心配なんてかけられない。
「悲しませはしない」
「ホセ?」
「なあ、ロラン?前に言ったこと、覚えてるか?」
「遺言だろ。馬鹿馬鹿しい」
「そうでもない。さて、そうと決まったのなら、これ以上寝てるわけにはいかねえな」
「おい!?」
「Mirage.」
静かに囁くと俺の体は医務室の外に出た。
「待て!!まだ安静にしてろ!!」
ロランがおってくるが、もう十分すぎるほどの休息は摂った。
「ちゃんと働かなきゃな」
俺の存在価値がなくなってしまう。
ロランは知らないが、俺は生まれながらに呪われてた。
それでも俺は、服従によって、生きてきた。
いや、生かされてたんだ。
これ以上は、甘えるわけにはいかない。
死ぬほど働かなくちゃ、存在のデメリットと釣り合いが取れなくなる。
辛くても苦しくても、誰かの役に立つことで、ようやく俺は存在価値が、0になる。
勿論、0じゃダメだ。
そのためにはもっともっと働かなくちゃいけないのに…
ただでさえいらない存在なのに、看病なんかしてもらうんじゃなかった。
きちんと治療費は10倍にして返さなければ。
そう俺は心に決めて追ってくるロランから逃げた。


