<2.5日目>
ココハドコ?
ダレカ、イナイノ?
マックラダヨ…コワイヨ…
ドウシテダレモイナイノ?
ダレカ…
サムイヨ…
・・・・・
!!!
最近、妙な夢を見る。
今のは、俺が生まれ落ちたときの記憶。
目も開いていなかった赤ん坊は泣き続けた。
誰にも抱かれることなく。
今でも覚えている。
俺は一度も、親に抱かれたことはない。
初めて味わったのは、鼻を衝く薬の香りと目の覚めるような白。
「なんで、こんな夢を…?」
人は、死にゆくときに今までを振り返るとは言うが、こんなに早くては緊張感なんてものがない。
それに、思い出すのは死ぬ間際の一瞬だけじゃないのか?
何週間も前からこんな夢を見せられちゃたまらない。
俺にとって、幼少期は、忌まわしい記憶なんだから。
まさか思い出を振り返るんじゃないだろうな…
こんなの、死ぬ間際もやるのか?
思い返さなくても一回で人生は十分だ…
「ようやくお目覚めか?」
「ロラン…?なんで、ここに…?」
「おいおい、俺はロランって奴じゃないけど?」
「え…?じゃあ、誰…?」
「覚えてねぇかな…ウィング、だよ。ほら、クリアス・ウィング。」
頭がうまく回らないのは寝起きのせいか、この病のせいか…
それとも、あまりにも現実離れした光景だからか…
「…ウィング…なんで、ここに?」
「お、思い出したか!?」
嬉しそうに二カッと笑うその笑顔。
少し長くなったものの、約二年前と同じ輝くような銀髪。
…間違いない、あの、ウィングだ。
「少しみねぇ間にこんなに弱っちまって…ちゃんと食えよ?」
「…なんで、ここに」
「ん~?愛しい彼女のお・ね・が・い。断れなくてよ~」
「…!かn「付き合ってんだ!俺たち!」
「…そうか…おまえならいいか…」
「心配か?」
「当たり前だ」
「それを本人も前で言ってやれよ。泣いて喜ぶ」
「迷惑なだけだろ。」
「んなわけないだろ」
俺はふと、機器を動かそうと左手を持ち上げる。
___カシャン…
「!?」
「あぁ、ロランって奴がやってた。ありゃ本気だったぞ」
響く金属音。
冷たい感触にびくりとして左手を見てみれば、まとわりつく黒いチェーン。
体中、全く自由が利かない。
「チッ…」
「舌打ちすんなよ(苦笑)」
「…」
「それはそうと、ないのか、アクアと会う気は」
「ない。どんな顔をして会えというんだ」
「ふつーの。アクアが可哀想だ」
アクアは俺の義妹。(法律上は←)
愛くるしい声と常に潤むたれ目が特徴的な13の少女だ。
俺に似なくてよかった。
美貌のほうはしっかり両親のを引いてる。
(↑お前もだよ。絶世のイケメンめ(泣) by ウィング)
「俺が兄であることのほうが深刻だ」
「はぁ…お前のその性格更生しねぇの?」
「悪かったな。性格が悪いのは重々承知だ」
「そういう意味じゃないけどな。馬鹿」
「知ってる」
「相変わらずだなお前は」
「なぁ、アクアはどうしてんだ?」
「やっぱり心配なんだろ」
「当たり前だ」
「どうしよっかな~」
「おい。」
「なぁ、一回でいいからお願いします、って言ってみてくれねえか?」
「お願いします。ウィング様(棒)」
「…(泣)いいよ、教えるよ!!」
半ば自棄になったウィングに冷めた目を向けつつ、こんな時でもアクアで頭の中を満たせない自分がいた。
たった一人の家族なのに。
たとえアクアがそう感じていなくとも、俺にとってはアクアは家族だった。
兄弟愛であったとしても、俺はアクアが好きだった。
もちろん今でも。
だが、それは過去のこと。
今は、アクアに思いをはぜることができる、数少ない時なのに。
「駄目だな、俺は」
こんな時でも、クラウンの笑顔が目の前をちらついてきて。
【ホセside】End


