<1日目>
ワコク・セイ…
クラウンとお前が愛し合うための手引きを俺がするのだから…
クラウン…お前が好き…
どうして、俺は俺なんだ?
クラウン…こっちを向いて笑うなよ…?
笑うなら、二人の時に笑って…
・・・・・・・
「っはぁっ!!」
起き上がってみるとひどく体が痛む。
固い大理石に受け身を取らず打ち付けられたせいか…
「起きましたか…?」
「あ、医務室…」
「倒れた原因ですが…表向きは過労ということにしておきましたよ」
ここは医務室か…
白衣ということはこいつはドクター。
…ん?表向き?
「ストレスですね。本当は」
「なんで隠したんだ?」
「…可笑しな夢を見てましたから」
そういってドクターは近くの機器を指さした。
「っ!?」
「悪いことではないと思いますけど…」
見られていたらしい。今の夢を。
「…口止め料でもいるか?」
「…知ってるのは私とあなたの話した人だけです」
「…いくら欲しい?」
「…大丈夫ですか?」
「いくらあったら黙ってくれる?」
とにかく、クラウンに知られないなら何も惜しくない。
「何万?いや、何億あれば…」
「言いませんよ、心配しなくても。」
「頼むから黙っててくれ。いくらでも払うから…」
「だから言いませんって…」
クラウンに知られるのだけは避けたい。
「だって、クラウンが知ったら…」
あいつは吸血鬼の恋を知ってる。
絶対に俺の恋を叶えようとする…
駄目だ、それだけは…
俺なんかのためにクラウンを路頭に迷わせる訳にはいかないんだよっ…
「それだけは避けなきゃいけないんだ…」
そう、どんなに辛くても。
たとえ、死んでも。
「ジュエル?」
「クラウンだけは…」
「ジュエル!?」
俺の頭の中は、クラウンだけでいっぱいだった。
自分のことなど考えていられるほど俺は暇じゃないんだ…
クラウン…
「今日は見合いか…?」
今は午前3時。
9時にはまだ間に合う。
「仕事…着替えてくるか…」
「やめたほうが…」
止めるドクターの声は耳を通り抜け、届かない。
体の痛みさえ忘れた俺は自室へと向かった。