<次の日>
「うう…ぐすん」
「馬鹿な真似をしたな、クラウン」
「だって…」
結果は惨敗。
というか、宇宙最強の身体能力を持ち、なおかつ最大(限界無視)の特訓(という名の自虐)を課しているホセにかなうわけがない。
…でもホセが怒り心頭なのにはほかの理由があった。
「お前な、あの願書が通ってみろ、ルスタミアスは大パニックだ」
「そんなこと言ったっ「お前は仮にも王の血筋を引く一家の一人。身勝手な行動のせいで宇宙が滅ぶことさえあるんだ。
酷なことを言うがな、どう頑張っても絶対王政のこの宇宙で、お前を差し置いて誰かが最高神の座に就くことなどありえない。
どうしても嫌ならさっさと婚約しろ。そして死ねよ。
それしか方法はないからな」
突き放すようなホセの言い方に、たまらずクラウンは泣き出す。
「そんなこと、言わないでよ…ホセの…バカ…」
「俺のことならいくら嫌ってもらっても構わない。むしろ本望だ。
大体、ここに俺を連れてくるのがおかしいんだよ。」
「だって…ほかっといたらホセ死ぬんでしょ…!!」
「………じゃあお前…」
凍り付きそうな微笑でホセはクラウンを見つめた。
「俺がこの宇宙のために死ぬのを、止めないでいられるのか?
もし、そんな事態になって仮にも俺を優先しようものなら、お前の一族は…」
「ホセやめてよ…!」
「…終わるぞ。何億年と続いたこの王政が崩れる。」
「やだ!聞きたくない!」
「文系の嫌いなお前はよく言ってたよな、歴史なんかなくなればいいと。そうだな、過去を知るのは無駄なことかもしれないが。
だけどな、お前はダメなんだよ。お前は、知るしかない。
お前が最高神である限りは。」
「私は…っ望んだんじゃない!!」
「そうだな。だが仕方がない。宿命なんだよ。諦めろ」
「なんで!」
「俺も諦める。だからお前も諦めてくれ。変わることはない。
これが、最善の国の形なんだから。」
シクシクと泣き続けるクラウンを慰めようともせず、ホセはただ見つめていた。
ロランは、放心していた。
クラウンを見つめながら嘲笑うホセの目が、
微かに赤みを帯びていたとも知らずに。