「おはよ「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
今度はクラウンに拒絶され、かなり悲しむホセ。
こう見えても心は優しい。
傷ついた心に海水を刷り込み、あまりの痛みに立ち直らざるを得なくなったホセの心は、もっと自分に大事にされたがっている。
ホセの優しさは、あくまで他人限定。
自分の思いどうりになるのをいいことに、心も体もいいようにこき使っている。
…自分の体だから、思いどうりになるのは当たり前だけれど。
とにかく、立ち直るのに今度は1.2秒もの時間を要した。
神並に鋭い___リアルに神だけど___クラウンはホセの異変に気が付いた。
「どうかしたの?」
「何でもない。さっさと湯あみだ」
ホセは見事に可哀想がってほしいという心の声を無視。
…心の声さん、ドンマイ。
「…本当?」
なおも食い下がるクラウン。
ホセにしっぽがあったのなら、間違いなく今、ちぎれんばかりに振られていただろうけれど。
残念ながらホセにそんな便利な感情表現方法はない。
「しつこいぞ、クラウン。さっさと湯あみだ。
…ロラン君は…」
そういってホセはそばに控えていた女性を指さして言った。
「彼女に仕事を教えてもらうといい。
…頼んでいいか?」
「っ…はい…」
お約束のギリギリの微笑みを浮かべながら、ホセはすっと立ち上がった。
「俺はクラウンにこれを渡してくる」
そういって笑ったホセの笑顔は、さっきの無邪気さのかけらも宿していなかった。


