ラショナリズムシンキングLOVE


「ジュエル…さん…?」

「? 何か御用ですか?」

「少し仕事…」

「すみません。クラウンがまた脱走したんですか?」

「いえ、あの、少し休んだら……」

せっせと窓拭きをしていたホセに話しかけているのは大臣。

ホセはコテンと首をかしげる。

「何でですか?」

「何でって…」

この城では、最も早起きなのはコック。しかしそのコックもホセよりは早く起きられない。

最も夜更かしなのは大臣だが、ホセよりは早く寝る。

「何時間寝るんですか?」

「…吸血鬼は夜型なんです。」

「……でも、昼だって…」

「皆さんが働いてるときにのんきに寝るほど薄情ものじゃないですよ…」

哀しそうなホセは色々と勘違いしている。

大臣はホセを責めているわけではないのに。

「不眠不休…」

「当然じゃないですか。……あ、給料のことですか?大丈夫ですよ、クラウンにはいつもどうり払うように言ってありますし、管理は俺が…ああ、クラウンが確認してますよ、それに財務官も…だから心配しないでください。」

やっぱり勘違いしているホセ。

大臣は給料ではなくホセの体の心配をしている。

それに本人は全く気付いていないが、ホセは城内__特にK塔で絶大な信頼を得ている。

「…ただ働き…」

「置いて貰えるだけ幸せです。そのくらい当然ですよ」

____労働者の鏡だ…

大臣は改めてそう感じた。