婚約発表日、クラウンとセイは庭園のベンチに座っていた。

「…」

木漏れ日が眩しい。

小鳥がさえずり、遠くで銃声が響く。

「「…」」

二人共に何も話さず、ただただ静かに風景へと化していた。

大きな噴水からは溢れんばかりに光が溢れ、生体ロボットが二人にすりよる。

風に乗って木々の葉はわらわらと揺れる。

しゃばしゃばと噴水の音、遠くに聞こえていた銃声はすぐ近くで二人の鼓膜を震わせた。

「「…」」

ふと小鳥が一斉に飛び立つ。

無機質な鉛が大樹を削る。

不意に吹いた風が緑と青の木の葉を飛ばした。

「「…」」

がさりと音がする。

それは紛れもなく人。

響く銃声。

「「……?」」

___"銃声"。

「刺客、だよな」

「…多分」

「「逃げたほうがいい?」」

あわてて立ち上がる二人。

銃声はすぐそこまで来ている。

「急げ!」


今まで何度かあった突然の襲撃。

一つの巨大な組織が計画していたことは分かっているが、毎度毎度襲われても逃げられる。

情報網を駆使して探してはいるが、こちらの網をかいくぐってしまう。

まさになすすべ無しの状態だった。


「居たぞ!ここだ!」

「待て!」

聞こえてきた銃声は恐らくガードの打ったものだろう。

それも聞こえない。

「チッ…早く走るぞ」

「分かってる…けど…はぁ…はぁ…」

もう完全に体力は男に劣ってきたクラウンはただでさえ動きにくい服装で限界が近づいてきていた。

「キャァッ!!」

「馬鹿クラウン走れ!」

どこかで聞いたことあるような台詞だと思いながらクラウンはまた走り出した。