【ホセside】

俺以外の生命が消えたココで、俺は自分を見ていた。

「理性

欲望

それは、時に天秤にかけられる。


…はずだった。


"お前には欲がない"

そう言われたこともある。

"ある意味お前は誰より人間らしい"

そう言われたこともある。

違うんだ。

俺は…天使か、悪魔にしかなれない。

俺には欲も、野望もある。

ただ、それを尊重する自分がいない。



俺だって、心に天秤はある。

理性の皿も、欲望の皿も。

俺に足りないもの、それは、


それを支える、支柱。


不安定すぎる心はほんの少しの差でガタンと傾く。

支柱がない。

俺の心は、折れたまま。

何も、迷えない。

天秤は、揺れない。

損得は、俺にない。


俺は、迷いがない。

決して、良いことじゃない。

迷わない。迷えない。

紙一重なんかじゃないんだ。

俺は、超客観視の持ち主。

そして、客観的主観視兼主観的客観視の性格。

俺は自分の判断に対して、何の自身も加えない。

人間としてあり得ない、超客観視客観的主観視兼主観的客観視。

悪魔と天使はいるのに、俺がいない」

俺は、ココに閉じ込められてる。

外が分からない。

外は分からない。

キタナイ。


「だからダシテ」

黒く渦巻く冷たい心で凍える。

「ダシテ」

自由になりたい。

「許して」

【ホセside】END

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"さよなら。ローズ"

ローズが死んだあの時、自己保身のため、本能的に失うはずだった記憶。

だけれど、邪魔が入った。

あの、泣き声。


ダイアは復讐心によって記憶を守り理性を失った。

ホセは自分を重ね合わせ、愛情で記憶を守り、自我を失った。

その瞬間から、ホセは生物として大切なものを

失った。