ラショナリズムシンキングLOVE

「おかえりなさあい♪」

「ああ、アクア。ただいま、いい子にしてたか?」

「うんっ!すいた!」

「ああ。ちょっと待っててな」

ちょこちょこ歩く幼子、アクアに微笑みかけながらホセはキッチンへ向かった。

よくここまで元気に育ってくれた、と感傷にふける。

今日はアクアの二歳半の誕生日?見たいなものだ。

アクアの誕生日は半年に一回くる。

それを心待ちにしていたアクア__あのときの赤ちゃん__はギュウッと兄を抱きしめる。

「お兄ちゃん、お誕生日のお願い事、していい?」

「ん?」

「あのね、いっしょいてほしいの…あくあさみしーから…」

「………!!」

前回は言葉も話すことはできず、お願い事はなしに、ケーキとたくさんのキャンディーをあげた。

それを幸せそうに食べるアクアに顔がほころんだ事を今でも覚えている。

「(まさか…寂しかったのか…)」

小さ過ぎてそんな感情があるのかさえ知らなかった。

アクアは確かに識字の能力は高かった。

だからこそ感じることなのか、ホセは胸が痛んだ。


遺された財産はほとんどなく、聞けば生前に憂さ晴らしにやっていたギャンブルで大負けしたんだとか。

___そんなことはどうでも良い。

ホセは思う。

問題はホセが働きに出るしかないことだった。

親が居れば感じずに済んだかも知れない感情を教えてしまった事にホセは罪悪感を抱く。

この二年と半年、ホセは必死にアクアを普通に育てようとした。

できれば貴族らしくダンスパーティーなんかにも出席させてやりたかったし、きらびやかに着飾ってやりたかった。

でもホセにはそんな関係をもった人はいない。

それならせめて、と中流家庭の子供達と同じ暮らしをさせた。


一日三食、好き嫌いしちゃ駄目だと注意して。

間食は食べ過ぎるなとお菓子を取り上げたり。

祝日は公園や遊園地にも連れていく。

まだーまだーと駄々をこねるアクアにせんべいを与えながら。


でも、それに比例しホセは苦しくなってくる。

食事は一日一回なんて無理。

人参やじゃがいもの皮、キャベツの外側など、食事にしては少なすぎる量を最高2日に一度。

最悪一週間に一度。

衣服なんか一、二枚しか持っていない。

一日の四分の三は働き、そのうち90%は肉体労働。

奴隷のように働かされるが、貢献度によって日々変わる日給。

だが5歳児にしては高い給料でホセは気にいっている。

だがそうなると必然的に睡眠と休息時間が減る。

今だって睡眠は分単位だし、休息なんて食事位。

明らかに限度を越えた働き様でもアクア一人で限界なのだ。

___しかし、寂しいか…

シフトを組みなおして労働時間を減らすことは出来るが、それだけ給料が落ちる。

いっそ臓器でも売ればなんとかなるかも知れないがそれでは日常に支障が出る。

危ない仕事に手をつけるか…

闇のブローカーにでもなればアクアに貴族のような暮らしをさせてやれるかもしれない。


___でも駄目…

万が一事業に失敗してアクアが捕まったら?

売り飛ばさざるを得なくなれば本末転倒だ。

逆に苦しめてしまう。

将来に傷が付くのも避けたい。

俺と一緒にいるからといじめられでもしたら…


そうなるとやっぱり短い時間で体と頭を酷使するしかない。

「…お願い、叶えてやるよ」

「やたぁーー♪」

無邪気に喜ぶアクアに、自然に笑みが溢れるホセだった。



どんなに苦しくても、アクアだけは守るつもりだった。