その日から、約七ヶ月後のこと…


「何でそんなことした!?何故!何故だよ答えろローズ!」

「…」

「ダイアも黙ってないでよ、何で!?」

「ホセ…いいんだ…」

「そんなことない!今からでも蹴り殺せよ!」

「駄目ホセ、それだけは…それだけは駄目…」

「お前は体が弱いのに!もし吸血鬼だったらどうする気だ!」

「この子に罪はないの」

「でも、でも!」

伝えたいことが上手く言葉にできない。

すっかり成長したホセはうつむく二人を睨みつけた。

___何で?何で何でなんでなんでなんでナンデナンデナンデ!!

「ずっと一緒って言ったじゃねえか!」

「良いじゃない。貴方にも妹が出来るのに」

「違うっ!!妹なんて要らねえ!二人がずっと居てくれればそれで…」

「大丈夫。まだ死ぬと決まった訳じゃない」

ダイアはいとおしげにローズの膨らんだ腹部を撫でた。

「やだ!殺せ!蹴り殺せ!」

バタバタ暴れながらホセは叫んだ。

ローズの中に宿る小さな命を消そうと…


魔界にかぎらずルスタミアス(来世)では、婚姻を結べば勝手に子が宿る。

間隔、時期はまばらで一生それは変わらない。

ダイアとローズは僅か二週間の差で妊娠し、同時に生まれた双子。

二人と離れて15才差で生まれたのがホセというわけだ。


「いやだ!出産のショックで死んだらどうすんだよ…!」


もちろん婚姻を結べば兄妹であろうと子供は出来る。

加えて特に魔界の貴族は本家の姓を守りたいが為に、兄妹・姉弟で婚姻を結ぶことは珍しくなかった。


「お前は心配症だな、大丈夫。もうあと一週間位だし。そこまでローズの体重も落ちてないし」

「でも万が一の事があったら…っ」

「大丈夫よ。全くホセったら」

微笑みながらローズが言った。