気がつくと俺は、いや俺達は屋敷の中にいた。
シンデレラ城のように異常に大きなガラスの階段。
美しい輝きを放つルビーで彩られたシャンデリア。
白い大理石の床。
シャンデリアのあかりで全てが赤色に染まっていた。
「おかえりなさいませ、ご主人様。お食事の準備が整っております。どうぞ」
『っておいおい、ご主人様って…!』
まるで奴隷じゃねえか…
どうやら帰宅したらしいダイア(もちろん当時の)に死んだ目で冷たくホセは深々と頭を下げる。
「…それよりもさ、俺は今、イライラしてんだよ」
「はい。了解いたしました」
一秒の隙もない、すっかり凍り付いて曇りきっている瞳。
唇は固く結ばれ、美しい顔たちも相まってその姿には人間味は感じられなかった。
「どうぞ。」
麺棒のような1m程の金属性の棒をホセは差し出した。
「…」
___バァンッ!!
『っ!惨い…』
あろうことか、ダイアはその棒で思いっきりホセを殴った。
舞う血飛沫。
___バァンッ、バァンッ!
「っ、はぁっ…」
「…ふぅ、いいストレス解消だな、お前は!」
「…ゲボッありがとうございます」
「さ~飯だ♪」
「…」
ホセは黙って自分の血で汚れた床を拭き始めた。
___キュッキュッ…
小気味良い音が響く。
「…なんだよ!」
「ダメでしょ乱暴は」
「だってよ~…」
居間と見られるところから一際大きな笑い声が響いた。
それでもホセは黙って涙さえ流さずにいる。
…訳がなかった。
「うぅっ…」
ポタリ、ポタリ。
滴り落ちる涙を慌てて拭き取る。
ぬぐおうともせずに、ひたすら床を磨くホセだった。


