さくら館へようこそ!

「うん。なんか、話読んでてリアルな感じがした。」

「あ、ゆりちゃんもわかる?」

「うん。わたし、その本気に入ってるんだよね。」

「あ、わたしもです!!もう、何回も何回も読み返してしまって。」

ゆるちゃんは、本を抱きしめて目を閉じる。

この子の名前は、前崎(まえさき)ゆるりちゃん。

普段は、おとなしい子だけどかなりの本好きなんだ。

「この本を読むたびにわたしも、妖怪さんに会ってみたいなって、思うんです。」

そう言って、ゆるちゃんは和やかな顔でつぶやく。

「・・・そ、そうなんだぁ・・・。ゆるちゃんは、妖怪とか見たことないの?」

「はい。でも、いると信じてます。ゆりちゃんは、信じますか?妖怪の存在。」

ゆるちゃんは、わたしを見る。

「え?うん、もちろんだよ。」

わたしは、苦笑いで答える。

ごめんね、ゆるちゃん。わたしには、見えるんです。