プロローグ

「さくら館へようこそ。」

今日も、またこの言葉が聞こえてくる。

「じゃあ、わたし学校に行って来るね。」

「いってらっしゃい、ゆり。」

わたしは、部屋を出て廊下を歩く。

「ここの館、すっごいいいよね。温泉に入りながら桜を一年中見られるなんて、ちょー新鮮よね。」

「そうね、こんなことめったにないものね。」

わたしは、すれ違った浴衣姿の二人を見つめる。

「・・・。」

はじめまして、わたしの名前は、桜 ゆり。

この館は、一年中桜が咲き続けるんです。

こんなことになったのは、約5年前からです。

原因は、お父さんもお母さんも、この館の従業員も知らないの。

でも、わたしだけが知ってるの。

それはね・・・。