物心がつき始めた小学2年生の私、沙七。

「ただいま…」

家に帰るとむせかえるようなタバコとお酒の匂い。そして奥の部屋からは甲高い女の声が聞こえてくる。

「あぁ!ん…はぁ…ん…こう…
もっと愛して」

…今日はこうって言う男か。

甲高い声を出している女は…私の母。認めたくもない。

この女は毎日の様に色んな男を連れ来んでいる。何をしているのかなど、普通は分からないはずなのに…

「あら、帰ってきたの」

そう言ってあの女が近づいてくる。

「部屋に行くから…」

そう答え、階段を登ろうとした。

…だが突然手を引っ張られ、奥の部屋へと連れて行かれる。
あの女が微かな笑みを見せた事で、私は確信した。

ドアが開き中に押し込まれる。

「あ!沙七ちゃーん!会いたかった〜」

そう言って私に近づき、抱きつこうとした。

「やだっ‼︎」

全力で押しのけ部屋の端に座り込んだ。

「あはは、かわい〜。本当、響さん譲りの顔だよね〜。将来が楽しみだな。」

そう言ってケラケラと笑う。

この女、響なんて呼ばれてるんだ。
…キモい。

「顔がよくなきゃここに置いとくわけないだろ。道具にはしっかりと働いてもらわないと。」

そう言って笑う。

道具…もう言われ慣れた。今となっては何とも思わない。

「響さん、酷いこと言わないの。ほら沙七ちゃん、こっちおいで〜」

…行くわけないだろ。お前だって同じように酷いことするんじゃん。よく言えるよ…

「さっさと行けよ」

あの女が耳元で呟き、思いきり背中を押す。