黒い霧が抜け出たルシータの体は、強い光に包まれた。
しばらくして光から開放されたルシータの姿は、それまでの黒いローブを羽織った魔女の姿ではなく、
キラキラと輝く白いローブを羽織り、その背中には純白で大きな
羽が生えた、天使の姿をしていた。

「レイ、リン、僕たちを助けてくれてありがとう。これでやっと、僕たちは解放された。」

そういったエルの姿も、それまでの真っ黒な服から、綺麗な純白の服を着た男の子へと姿を変えた。

【レイ、リン、本当にありがとう。感謝してもしきれないわ。】

「あの、あなたは、いったい・・・」

レイは、我慢できずにルシータに聞いた。

【自己紹介がまだだったわね。私の名前はルエラよ。そこにいる、ライラの妻で、エルの母親よ】

そこまで言うと、今度はライラが口を開いた。

「君たちのおかげで、ルシータを倒すことが出来た。
 僕たちはもうすぐ、僕たちのいるべき場所へと帰らなければならない。」

「その前に、君たちに話しておきたいことがあるんだ。君たちには、それを知る権利がある。」

レイとリンは少し戸惑ったが、2人を見つめるライラたちのまなざしが、とても真剣だったため、思わず頷いてしまった。

2人がうなずいたことを確認したライラが、昔い話を始めた。

“昔々、ある3人の天使が、悪さを繰り返している魔女を倒すために、地上へと降り立った。
3人が降り立った村の人たちは、とても親切にしてくれたが、天使であることを知られるわけには行かないため、
村の人たちと距離をおくようになった。

するといつしか、その村では3人が魔女の仲間なのでは・・・。
と噂が立つようになり、村人たちは3人を避けるようになっていった。

天使が地上に降り立って数日後、村ではお祭りが行われた。
天使たちも祭りに参加したが、そこで事件は起きた。それが200年前の失踪事件だ。

天使たちは3人は、魔女が住むといわれている森を探しに行ったが、そこで魔女に捕まってしまった。

3人のうち2人は地下室の檻の中へ入れられ、
残された1人は、魔女に体を乗っ取られてしまったのだ。

それから200年、もうだめだと思いあきらめていたところに、君たち2人が助けてくれたのだ。”

話し終わったライラが2人を見ると、視線に気がついたレイが、慌てて聞いた。

「じゃあ、あなた達は天使なの?」

レイの問いにエルが答えた。

【そろそろ時間です。私たちは、これから天に帰ります。】

「あの!ララたちは、どうなるんですか?」

「心配要らないよ。彼女たちは僕らが責任もって天までつれていくから。」

そういうと、ララたちの体がゆっくりと天へ昇っていった。
彼女たちは、最後に“ありがとう、私たちを解放してくれて・・・。”
と言って消えていった。

その後を追うように、ライラ、エル、ルエラも、羽を広げて天へと昇っていった。

とても優しく、温かな笑みを残して・・・。

ライラたちの姿が完全に消えた後、レイとリン、そして子供たちは意識を飛ばした。
レイたちが目を覚ましたのは、それから数分後のことだった。

村の子供たちは、大人たちに事情を説明した。
大人たちは、なんの冗談だと笑ったが、子供たちの真剣なまなざしを受け、
子供たちの話を信じることにしたようで、レイたちに、今まですまなかったと謝った。

次の日から、レイたちは正式に村の人だと認められ、村の人たちと楽しく暮らし始めた。

それから数年後、病気だった父は、2人を残して亡くなってしまった。
しかし、その死に顔は、とても穏やかだった。

父が亡くなってしまったことは辛かったが、村の大人たちがとても可愛がって、
自分の子供と同じように育ててくれたので、ちっとも寂しくはなかった。

レイとリンは、今でもホシツキ村で、村の人たちと幸せに暮らしている。
そんな2人を、空の上から見て微笑んでいるものたちもいたそうだ。

【レイ、リン、ありがとう。いつまでも、いつまでも幸せに・・・・・】