大切なことを突然思い出したかのように手を叩く溝口先生。





「そーや、吉井にこれを渡すのを忘れてたわ!」





溝口先生が足元に置いてあるダンボールの箱の中にから綺麗に折り畳まれた新品の赤色のジャージの上下を取り出した。






「これなー、坂口が吉井の入部届けを持って来た日に、マネージャーの小川が飛び上がって喜んでその日の内に買いにいったお前の分の部活で着るジャージや。



ちなみに皆の部費の一部から購入したらしいで──。皆、お前のこと待ってるんやで」






──小川先輩と同じお揃いの赤いジャージ。






私の為に急いで買い揃えてくれたなんて……。






サッカー部の皆の温かい思いがいっぱい詰まっているジャージを大切にしないと。





思わず嬉しくなって涙を浮かべる掬恵。