「部活、欠席で。家へ帰るんじゃっなかったの……?」








──どうして、ここに坂口くんがいるんだろう?








周翼が掬恵の体の上に乗っている白いウサギをひょいっと片手で抱き上げ、そしてもう片方の手で掬惠の手を握り強く引っ張って掬恵の体を起こした。







下を俯いたまま「ありがとう……」とずれた眼鏡を戻しながら周翼にお礼を言う掬恵。








「帰ろうと思ったけど……、吉井さんの事が心配になって──、ずっと後をつけてた。ごめん」






「あのー?私のいったい、どこが心配なの……?」







床に落ちている部費を二人で拾いながら会話をしている掬恵と周翼。








「全部。つまり、吉井さんが廊下で転んで怪我をしたりしないか……とか、心配で──」






掬恵が呆れた顔で「あのっ、私は、何もなければあともう少しで無事に職員室へ到着するところだったの。それが、それが……、あの聞こえてきた咳のせいで……」と少し悔しそうに話をする掬恵。