慌てて小さな手鏡を取り出し、自分の顔をまじまじと見始める掬恵。







──鼻毛は、そんなに気にするほど伸びてはいないし……。







目やにもついていない。








歯の間に今朝食べた魚の鮭の身も挟まっていないし……。







ハナクソもついていない!!







じゃあ、どうしてさっきから私の顔をじっと見ているんだろう?









掬恵の筆箱には今日も六色の付箋が貼ってある。








付箋に手を伸ばそうとする掬恵だが、躊躇をして途中で手を止めた。








やっぱり、付箋を使って会話をするのは良くないから、もう止めよう。








「あの──。どうして、さっきから私の顔をじっと見ているの?ちょっと、困るんだけど……」









周翼が付箋に手を伸ばした。








──坂口くん、もしかして、まだこの付箋で会話を続ける気?