私の家から200m先にある坂口くんの家は由緒正しいお寺で、将来の夢は頭をまるめて住職になることらしい。





超、現実主義の坂口くん。






高3になったばかりの4月の春。






たくさんの桜の花びらがふんわりと舞い、暖かい風が吹いていたある日──。







坂口くんは「来年もこんなに綺麗な桜を見ることが出来るんだろうか……」と急に寂しそうな表情で言った。









また別の日に、坂口くんが蟻の群れが死んでいるマルムシを高々と抱えて運んでいるのを見つけて、






ふと私の顔を見ながら「自分が死んだらどうなるんだろう……」とポツリと言った事がある。






自分とは、坂口くんのことだ。





どうして、坂口くんがこんなことばかりを言うのか、私はその時わからなかったけれど。






──その時、返事に困った私は、何も言えなかった。






時々、幾つか返事に困るような質問を急にしてくることがある。







偶然か必然か──、





高1・高2と私の隣の席になった事、合計4回。