教室ではなるべく目立たないように過ごし始めたのも、きっとその頃。






小学生の頃から変わらない私の前髪は、顔の半分が綺麗に隠れるぐらいの程よい長さと分量で、






それは世間の嫌な物を即座に見なくて済むような簾のような画期的な活用法があった。







17才になった今もワンパターンの髪型、頭の中心から櫛をすっと下へおろして2つに分け、肩甲骨まである長い黒い髪の毛をひたすら密編みにする。







長く垂れ下がる前髪の隙間から眼鏡のレンズが時折キラリと何度も光る。





これが吉井 掬恵、地味子の誕生──。







私がいちばん解放感に満ちる時は、学校から帰宅し、縦長の姿見の鏡の前で密編みにしていた髪のゴムを一瞬にしてほどく時である。






インスタントラーメンのように細かく波打つ自分の髪の毛をしばらくずっと眺め、眼鏡をゆっくりと外す。




まるで、幽霊のような私。





ああ、可愛いと普通に呼ばれている女の子達が心底本当に羨ましい──。