表情を変えない周翼が薄く口を開く。
「じゃあ、ちょっと思い出してみてよ……」
──今更、何を思い出せと言うのだ。
私が了解をした事など絶対にあり得ないのだから。
周翼が落ち着いた雰囲気で説明をし始める。
周翼の説明を聞きながら頭の中でまとめていく掬恵。
……周翼が書き終えた自分の入部届けと掬恵の入部届けを持ち、二枚の用紙の角をきちんと整える周翼。
『じゃあ、俺、顧問の先生に届けて来るね』
とりあえずの生返事をした掬恵。
『あっ。うんっ……』
──そうそう、私返事したのを覚えている。
何の事かわからず取りあえず返事をした……。
──もしかして、あれが“了解を得た”という意味にとられたのだろうか?