しかし、周翼はそんな状態の掬恵をよそに落ち着いて机に向かい、入部届けを二枚書いていた。
一枚は自分の物、
──サッカー部。
もう一枚は掬恵の物、
──サッカー部のマネージャー。
書き終えた入部届けの用紙を二枚重ねてトントンと角を軽く整え、席を立ち上がる周翼。
「じゃあ、俺、顧問の先生に届けて来るね」
周翼の声を聞きやっと正気に戻り、とりあえずの生返事をする掬恵。
「あっ。うんっ……」
周翼が嬉しそうな笑みを浮かべながらひょいっと軽い鞄を肩にかけてゆっくりな足取りで開きっぱなしの教室の前扉から出ていく。
まだ席についたままぼっとしている掬恵。
教室の大きな窓からそよそよと柔らかい風が吹き真っ白なカーテンを膨らませては揺らしている。