ベンチに座っていたいた掬惠がキーパーグローブを外し細い指で涙を拭った。 最後まで、本当に、坂口くんらしいね。 坂口くんの事、私はこれからも、ずっと好きかも知れない──。 掬惠が周翼のキーパーグローブをぎゅっと強く抱き締めた後、桜の花びらが沢山舞う青い空を眺めた。 ──坂口くん、ありがとう。 やわらかい春の風が菊惠の体ををそっと包み込む。 (完)