ーー翌日ーー



朝、周翼が瞬きをしながらうっすらと目を開ける。




目が覚めると今日もまだ生きているんだと少し安心する。




昨日よりも、体力がまた落ちたみたいだ。




起き上がるのに時間がかかってしまう。




まだ、気持ちだけを伝える時間は少し残っている。




今まで、ずっと秘密にしていた自分なりの告白の仕方。




それは付箋を使うこと。



ずっと、吉井さんにだけ伝えたいと思っていた。



ピンク色の付箋。




意味は嬉しい気持ち。



好きという気持ちを通り越して……、



ーー【 I love you. 】




自分の気持ちを伝えられる事が嬉しい。




左手のキーパーグローブの中に書き終えた付箋を貼り付ける。




周翼が、高校3年生の時の北海道の修学旅行での事を思い出す。




『ねぇ、坂口くん、クラーク博士の伸ばしている右手の意味を知ってる?』




『えっ、右手は宝物や大切な物を探している……?』




『じゃあ、左手は?』



『左手は……、大切な人を守っている』




周翼がキーパーグローブを包み紙で丁寧に包装をしている。




右手のキーパーグローブには自分の大切にしていたルーズリーフが、左手のキーパーグローブには付箋が。



吉井さんなら、きっとリンクしていることに気づいてくれるはず。





周翼は少し疲れ横になり、そのまま静かに目を閉じた。





それから、周翼の容態が急変し始める。





息が荒くなり、意識が混濁し始める周翼。




お父さん──、





お母さん





今まで苦労をかけることが




沢山あったけれど






僕を今まで育ててくれて、


ありがとう──。










──吉井さん、





寂しくなったら、
いつでも思い出して
君のそばにいるから。





俺は、息が苦しくなって、そのまま意識をなくした──。







そして、周翼の亡くなった時の顔は凄く穏やかだった。