掬惠と周翼がお互いの顔を見た。
坂口くんと視線があった。
吉井さんと視線があった。
2人の視線が一直線につながる。
坂口くん、左の鼻の真下に米粒が1つ付いているよ。
もしかしたら、私の口から飛んだものなのかも……。
吉井さん、額の真ん中に米粒が1つ付いているよ。
もしかしたら、俺の口から飛んだものなのかも……。
お互いの顔に付いている、微妙な米粒の位置。
掬惠と周翼は、お互いの顔を見たまま吹き出しそうになるのを必死にこらえていた。
まるで、小さい子供がにらめっこをしているよう。
下を俯いてくすくすと声を殺しながら先に笑い始めたのは周翼の方だった。
「あぁー、ギブアップ!あはっはっはっはっ……」
坂口くんが涙を流しながら笑っている。
掬惠も我慢しきれず周翼につられるように声を上げて笑っている。
坂口くんが先に笑ったから、私の勝ちだよ──。
やっぱり、私達こうじゃないとね!
この先、まだ坂口くんと笑って過ごしたいたいから。



