後輩の高谷が掬惠の耳元に顔を寄せて声を潜めて「吉井先輩、坂口先輩って何かあったんですか?」と訊いた。




「さぁ──っ?えっ……、え。私もわからないよ……」



本当に、わからない。




思い当たるとすれば、昨日のサッカー大会の試合が終わった後に坂口くんはロッカールームに呼び出されて顧問の溝口先生と西島先輩に酷く叱られていたという話を部員から又聞きをしたくらいで。




それに、“叱られていた”と聞ただけで、その具体的な内容までは私も知らないし。




昨日の今日で、どうして坂口くんが変わったのか、誰か知っている人がいたら私に教えてほしい。





しばらく、妙な空気のまま一緒にお弁当を食べ続ける掬惠、周翼、後輩の高谷。




皆がそろそろお弁当を食べ終える頃、後輩の高谷が話を切り出した。




後輩の高谷が掬惠と周翼の2人の顔を交互にじっと見ながら「じゃあ、2人に質問です。もし、好きな人がいてたら、どうやって告白をしますか?」と質問をした。





後輩の高谷のとっぴもない質問の内容に驚いた掬惠と周翼の2人が同時に口に含んでいたお弁当のおかずを勢い良く吹き出してしまった。





慌てて掬惠と周翼がハンカチを取り出し、あたふたしながら汚れた部分を念入りに拭き取っている。





そんな光景を涙こらえながらお腹を抱えて笑っているのは後輩の高谷だった。




後輩の高谷が掬惠と周翼を順番に指を指しながら「2人とも、なんか良く似てますよね……」と言った。