それから、お昼休みを知らせる鐘の音が鳴った。
鼻歌を歌いながら後輩の高谷さんが自分のお弁当を提げて2年2組の教室へやってきた。
後輩の高谷さんが坂口くんを見るなり「坂口先輩、どうしたんですか、髪!?」と驚いた。
あえて今日はその事を口に出さずにと言うよりも触れずに今日一日を過ごそうと思っていた掬惠。
私、今日は朝からずっと気まずくて坂口くんと喋っていないんだよ。
どうして、後輩の高谷さん、そんなことを坂口くんにさらっと聞けるの?
でも、坂口くんがどう答えるのか、興味があった。
箸でお弁当のおかずをひと口ひと口、
丁寧に口元に運んでは音を立てずに良く噛みを繰り返している坂口くん。
きりがいいところでごくりと食べ物を飲み込み、「……別に」と低いテンションで答えた周翼。
坂口くん、『別に』って……
?
返事、ちょっとあっさりし過ぎてない、たった、それだけ?
だけど、声のトーンから、いつもの坂口くんじゃないことは直ぐにわかった。



