周翼が描いた6個の絵の上を掬恵が無言のまま指で辿る。
──坂口くん、もっと絵を大きく描けばいいのに。
小さすぎて、私の指の先を一つ乗せたら、ほらっ、すぐに絵が消えちゃう。
・小さな魚
魚釣りは熱いから、ダメ。
・プリンを逆さまにしたような山の絵
富士登山は辛いから、ダメ。
・ボーリング
手首を痛めそうで、ダメ。
・映画館
私が小さかった頃、父親の趣味でむりやり強制的にホラー映画を見せられて、
終始涙を流していた記憶が蘇る。
・カラオケ
歌唱力がゼロだから、ダメ。
・飛行機
乗り物酔いをしやすいから、ダメ。
──えっ~、……この中から絶対に選らばなきゃいけないの?
待ちきれない様子の周翼が「もう、決まった?」と掬恵に声をかける。
──もう少し、待って。
小さなため息をする掬恵。
私がバカだから……、こんなことに。
自業自得って、このことをいうんだね。



