──坂口くん、静かな時は本当にどこにいるのかがわからないぐらい静かなのに。
嬉しそうに笑う時は、私よりも大きな口を開けて、大きな声で笑う。
きっと、じゃんけんに勝ったのがそんなに嬉しかったんだね──。
あぁー、ちょっと、悔しい。
しょぼんと元気がなくなる掬恵。
チラッと掬恵の顔を見た周翼が静かな声で「俺と、どこかに出かけるのが──、そんなに嫌?」とやわらかくきく。
ヒヨコのくちばしのように口先だけをとがらせて「べつに……」と少し拗ねていじけている様子の掬恵。
再びルーズリーフのしわをを両手で綺麗に伸ばす周翼。
「さあー、どれか一つ選んで。僕は、必ず約束を守るから……」
周翼が掬恵の瞳をじっと見つめる。
坂口くんのこのなんともいえないような真っ直ぐに見る視線、教室から電線に止まりにくる雀を待っている時の視線と良く似ている。
──約束通り、私は6個絵からどれか一つを選ばなくてはいけない。



