掬恵のケーキを食い入るようにじっと見ている周翼。
「吉井さん……」
周翼の言葉に体がびくつく掬恵。
「へっ……、何?」
──やっぱり、胸を張って人様に見せられるようなケーキではないよね。
下をうつ向く掬恵。
無言のまま気休めに畳の目の数を指で触りながら数え始める掬恵。
「食べる前に。吉井さん、ローソクを立てるの忘れていない?」
顔を上げる掬恵。
「は、はいっ──。ローソクは探したけれど……、どこにもなかったの」
「そっかっぁー……」
周翼はローソクがないことを残念がっていたけれど、それほどこだわっている様子でもなかった。
──別に待っているわけじゃないけれど、坂口くん、ケーキの文句は言わないのかな?
もしかして、変に私に気を使ってくれている。
なんて、考えたりした。
結局、その後、二人で照れながらお誕生日の歌を歌い、10分もかからないうちにケーキを食べ終えた。



