八の字眉毛になった情けない顔の掬恵。
「坂口くん、ごめん……」
なぜ急に謝るんだろうと不思議に思う周翼。
「えっ、どうしたの!?吉井さん……?」
「お誕生日が一緒なのに、私は坂口くんのお誕生日プレゼントを用意していない……」
「あぁ、僕は吉井さんにお誕生日プレゼントを渡したかっただけだし。逆に、僕はプレゼントを貰おうなんて、全然考えていないから」
すると、とつぜん掬恵は何かひらめいた様子で「ちょっとそのまま動かずに待っていてね!」と周翼に言い残し慌ててキッチンへ向かった。
しばらくすると戻ってきた掬恵は自分が作ったバースデーケーキを恐る恐る周翼のいる居間に運んで来た。
こんな時、ベートーベンの“運命”の曲が一番似合っていて流すべきだろうか。
材料は、家にある物を寄せ集めて作ったバースデーケーキ。
そして、お菓子作りはぜんぜん得意じゃない吉井 掬恵が作った、ところどころ型崩れしているケーキ。
酷評覚悟の掬恵の額に冷や汗が流れる。
「お粗末なケーキだけど……、坂口くん、一緒に食べよう」



