周翼は腕を組んで頭を傾げていた。
「吉井さん、お願い、少しだけ手直しさせて」
掬恵が頷き「いいよ」と言う。
周翼は掬恵の長い前髪をくるくるとうまくねじりながら横へ流し、それを髪飾りでしっかりと止めた。
それだけで気がすまない周翼は、続けて掬恵の許可なく掬恵が掛けていた眼鏡をそっと外す。
「これだ……」と確信を得たのか周翼が深く頷く。
──吉井さんの顔、現代風じゃない古風な顔つきだけれど、ぱっちりとしたつぶらな可愛い瞳、鼻はスッと鼻筋が通っている。
やっぱり、和風テイストな淡いピンク色の揚羽蝶にして正解だった、吉井さんの黒髪に良く似合っている。
「僕の想像を遥かに越えて……、凄く可愛いよ!」
静かな口調の周翼。
即座に掬恵は照れて下をうつ向き、両頬がぽっと赤くなる。
周翼は真っ直ぐに掬恵の方をずっと見ていた。
──独りよがりな考えかもしれないけれど、
こんな吉井さんを見ると
もう誰にも渡したくないという強い感情が
心の中から沸き上がってきていた。



