「えっ、……。これ、坂口くんが作ったの!?ほっ、本当に?」
「本当だよ。吉井さんが喜んでくれる顔を思い浮かべながら、一生懸命に作ったんだよ」
──坂口くんが自分で作った物だと聞くと尚更嬉しくて、大切にしないと駄目だと思った。
周翼が軽く咳払いをした。
「あの……、吉井さん」
「ん──?」
「今、密編を外して。その髪飾りを付けてみたら」
「えっ、密編を外すの?」
──それは、いくら坂口くんのお願いでも無理だよ。
「絶対に、僕が言った通りにしたら。吉井さん、間違いなく、本当にもっと可愛いくなると思うよ」
“絶対に”と“可愛いくなる”という言葉が掬恵の頭の中で何度も連呼する。
──坂口くんが、そこまで言うのなら……。
掬恵が少し躊躇をしながら密編を結んでいたゴムを取り、髪を綺麗に整えたあと揚羽蝶の髪飾りをチョコンと付けた。
掬恵は普段髪飾りを付けることなんてめったにないから、せっかく周翼からもらった髪飾りが斜めに傾いていた。



