居間に周翼を案内しタオルを差し出す掬恵。
周翼が「ありがとう!」とうつ向きかげんで掬恵からタオルを受け取り、濡れている部分を丁寧に軽く叩くようにして拭いていく。
「あぁ、あのっ……。スマホ、途中で切れてしまって。ごめん……」
「あぁ、はははっ。私、ぜんぜん、気にしていないから、いいよ」
掬恵が周翼に「どうぞ」と温かいほうじ茶をさし出した。
「どうも!」と周翼が仰々しい様子でお礼を言い、近くにいる掬恵の顔をチラチラと見ている。
すると、周翼がさっき持っていた小さな紙包みを再び掬恵にそっと差し出した。
それは、ちょうど周翼の手の平におさまるぐらいのこじんまりとしたサイズの紙包みだった。
「吉井さんに、……これを渡したくて」
まん丸な目をして小さな紙包みを興味津々に見ている掬恵。
「これは、何?」
掬恵が周翼の顔を見上げた。



