「僕のスマホに写真を送ってくれたの、実は吉井さんが初めてだったんだ。だから、凄く嬉しくて。イヤ……、本当は舞い上がるぐらい物凄く嬉しくて──」
上の空の掬恵、周翼の話を最後まで聞いている余裕は今まったくない。
「あっ……あ、そう」
掬恵の感情のこもっていない空返事。
そんなことを全然気にしていない様子の周翼が話を続ける。
「吉井さん、この写真凄く気に入ったからスマホの待ち受け画面にしてもいいかな?」
「……えっ・うん」
何にも考えずにとりあえず生返事をした掬恵。
「吉井さん、今日確かお誕生日だよね。お祝いに家族揃って皆で奈良へ行くって言ってたけど。楽しんでる?」
ようやく正気に戻る掬恵。
「奈良には行ってないの……、私」
「どうして?」
掬恵が自分がどうして奈良へ行かなかったのかという理由を周翼に細かく説明をした。
「なるほど。吉井さんらしいね」
「そうかなぁ?」



