電話ごしに母親が鼻をすする音と涙ぐむ声が聞こえた。
「掬恵……、あなたのお誕生日なのに。どうして……、こんなことを──」
この時、複雑な説明はいらないと思った。
「じゃあね、お母さん。お父さんと新婚旅行を楽しんできてね!」
「掬恵、……ありがとう」
「うん」
お母さんから“ありがとう”って言われると少し照れくさい。
電話を切る間際に家で一人になる私のことを凄く心配をしたお母さんは家の戸締まりやガスの元栓を締めること……、
そして、その他気をつけないといけない細かいことをずらずらと慌てた口調で話をし始める。
母親が話す度に頷き、何度も「わかった、わかったよ。わかったから……」と繰り返した。
──安心をした両親は奈良へ向かい。
そして、私はお誕生日なのに家で一人ぼっちになった。



