君だけに、そっとI love you.




少し重そうな旅行鞄を持った掬恵の両親が玄関のドアを半分ほど開けて「掬恵ー、もう行くよ。何してるのー?」と声を掛けて掬恵が来るのをずっと待っている。







私は返事もせずわざともたついて時間を稼ぎ、その時にふと良い案が思いついた。







ついに、このチャンスが来た──。








絶好のタイミング!






両親に感謝の“ありがとう”を伝えるチャンス。







「掬恵……?」


「掬恵!何をしているんだ!?」






しびれを切らしたお母さんとお父さんが私の名前を呼ぶ声がはっきりと聞こえた。





少し嬉しくなりクスッと笑う掬恵。







玄関にいる両親に声が届くように掬恵が大きな声を出す。






「あのねー!私、急にトイレに行きたくなったから。ゴメン、先に駅に向かって、歩き始めてて……。ごめんね──」







全部、嘘。







とっさに思いついた嘘。






「じゃあ、先に行き始めてる、駅で待ってるからね!」と玄関の扉がゆっくりと閉まる音が聞こえた。