――7月8日――

《お誕生日》






――吉井家――






掬恵が早朝から洗面所の鏡を独り占めにして、ずっと鏡とにらめっこをしている。






病院からもらった塗り薬が良く効いたらしく、掬恵のおでこのニキビの数は昨日よりも半分程の量に数を減らしていた。







両手に溜めた冷たい水を顔にバシャバシャと勢い良くかけながら洗顔を済ませ、塗り薬のクリームを人差し指ですくい取りそれをおでこに呪いをかけるかのように良く念入りに刷り込んでいく。






「はやく、なおれー。はやく、なおれー……」






鼻の付け根の出来物は、残念だけれど昨日と様子は全く変わっていない。








私、今日がお誕生日なのに──。






鏡を見たままがっくりと項垂れる掬恵。