掬恵の視線を離さずにずっと見ていた周翼。
周翼は掬恵の顔を見ながらある考え事をしていた。
──吉井さんがいつもよりも女の子っぽく見えるのはなぜなんだろう。
普段とは違うところ言えば、小さな鼻の穴にティッシュを詰め込んでいるところだけだ。
いやっ、違う。そんなことを言いたいんじゃない………。
さっき、吉井さんが俺の背中にしがみついてきて、顔を埋めた瞬間──。
俺は、なにか吉井さんのことを特別な目で見始めているような気がする……。
つまり、吉井さんのことを意識しているということ。
まるで心の中に穏やかな春風が吹いているようだった──。
もしかして、もしかする?



