クラスメート達の視線を気にしながら自分達の席に辿り着いた掬恵と周翼。
立ち止まった周翼がゴホンッと咳払いを一つした。
周翼の背中にしがみついたままの掬恵が両手の力をそっと緩めて席につき、震える手で適当に開いた現代文の教科書で自分の顔を即座に覆い隠した。
周りから声を潜めながらクスクスと笑うクラスメート達の声が聞こえる。
「プハハハッ。……って、吉井と坂口は何をこそこそしているんだろうねー。何か、あやしくない?」
「あの二人、なんかやっぱりちょっと変わってると思わない……」
「まぁっ、驚くことじゃないだろっ。今に始まったことじゃないし……。別に俺らや周りに迷惑をかけてる訳じゃないから、いいんじゃねーの……」
「まぁっ。う、うっ……ん。そぉだね」
声が聞こえる方に目線だけをキョロキョロと動かす掬恵。
──気にし出すと、きりがない……クラスメート達の声。



