岬side



なんであんなに前へ突き進めるんだろう…



いきなり立ち上がって自分の意思を主張する奈留を見て感じた。



たった俺の一言で…



あんなに自分の気持ちが強いものになるなんて。



俺にはできないことだった。



そう。あいつは…俺とは対照的な人物。



だから合わないはずなのに…



俺は気づけば彼女を目で追ってしまっていた。



別にただのクラスメイト。



最初は席が近かっただけで、テストの答え方を少しアドバイスしただけ。



なのに、これほど彼女が偉大なものになるとは思わなかった。






「岬!先生にわかってもらったよ!!」



そう言って嬉しそうにやってくる奈留。



「へぇ。」



本当は喜ばしいことなはずなのに…



そんなそっけないことしか言えない俺は本当に情けない。



「まだ結果が出たわけじゃないけど…実行委員長、なれたらなぁ…」



そう言う奈留に俺は聞いた。



「お前、なんでそこまで委員長になりたいんだよ?」



すると、彼女はさらりと言ってのけたのだ。



「だって岬が賛成してくれたし。」



そう…曇りのない瞳ではっきりと。



そんな彼女に心を打たれた。



こんな気持ちはただの衝撃だと。



そう思いたかった。






だって俺は。



自分をさらけ出せるような…奈留のような人間になりたいだけで。



「理想なんだよ…」



奈留は、俺の理想の人。



ただ…それだけ。




俺はそう天井を仰ぎながらつぶやいた。