かちゃっと音を立てて鍵をあけた彼……葵衣が、あたしを振り返った。



葵衣。

そう呼ぶことにどきどきして、しばらくは慣れそうもない。


でも、名前を呼ぶことで近づいた気がする距離が、うれしい。




「あの……あたしのことも、紫乃って呼んでほしい」




あたしの言葉に、意表をつかれたように少しだけ目を見開く、葵衣。



あたしは葵衣って呼んでるのに……あたしのことは“羽山”のままなんて、やだ。


……葵衣にも、紫乃って呼んでほしい。



葵衣はドアに手をかけて、照れてるみたいに口元を手の甲でかくした。



どき、どき、と鼓動が鳴り響く。

期待する気持ちが、ゆっくり上昇していく。





「っ……紫乃、」