「あたし、どんなに好きになっても、原さんと恵方さんとは結婚しないって、思ってた……」


藤浦さんが息を切らしながらしょーもないことを言う。


……ハラマキ。エホウマキ。


「ちょっ……俺の、酸素、返せ」


酸欠で死にそうになりながら笑う。



折角背中を押されて職場を抜けてきたのに。


雪なんて降ってきたのに。


全然ムーディーにならないけど、笑って笑って、幸せで。


ぎゅーーーーっと抱き締めてみる。



今度こそ、キスしちゃおうかなと思ったのに。


「ハセガワマキ、って太巻きの種類にありそうね」


藤浦さんが『ハセガワマキ』って、『海鮮巻』みたいなイントネーションで言うから、また笑ってしまって。


て言うか、嫁入りしてんじゃねーよ、と突っ込もうとしたけど、嬉しすぎて言えなくて。